子宮筋腫とは、子宮を形作っている筋組織(平滑筋)から発生する良性の腫瘍です。40歳代にもっとも多くみられますが、35歳以上の女性の5人に1人には大なり小なり筋腫があるといわれています。通常は閉経とともに縮小していきますが、大きくなると月経時痛、月経時の大量出血、腹部膨満、頻尿、便秘といった症状が出現します。無症状であれば治療の必要はありませんが、症状が強い方は治療が必要となります。
子宮筋腫は婦人科疾患の中で最も頻度の高いもののひとつですが、手術療法としては子宮全摘術による根治手術と筋腫核出による子宮温存手術があります。従来の子宮筋腫に対する子宮全摘手術は下腹部正中を20cmほど切開する開腹手術(従来法)でしたが、近年、腹腔鏡下手術の普及に伴い子宮全摘術も腹腔鏡下手術が普及しております。当院では、膣管の切開開放までの全ての操作を腹腔鏡で行う全腹腔鏡下子宮全摘術 total laparoscopic hysterectomy(TLH) および腹腔鏡下子宮筋腫核出術を行います。
従来法(開腹手術)と比較して、
@術中の出血量が少ない
A傷が小さく痛みが少ない
B美容上優れている
C入院期間を短縮し、早期社会復帰ができる。
などの利点が挙げられます。
お臍に10mmの穴をあけて内視鏡をおなかの中に挿入します。下腹部には3個の5mm程度の小さな穴をあけて手術施行しますが、それらは手術後、時間が経てばほとんど目立たなくなります。基本的に卵巣は温存します。子宮を支持する靭帯の切離や吸収糸を用いて子宮動脈の結紮切離、全周性に膣管の切開を腹腔鏡操作で行います。切除された子宮は膣から摘出し回収します。腟壁の連続縫合を腹腔鏡下に施行し膣断端を閉鎖します。手術の前日に入院していただき、術後5〜7日で退院となります。
術後創部写真
最後に全ての子宮筋腫の患者さんに対し、この手術法が可能というわけではありません。全身状態が不良で全身麻酔が不可能な方、過去に開腹手術を繰り返し受けた方では、内視鏡手術を行うと危険な場合もあり、従来法を選択する場合もあります当院では根治度、安全性を保ちながら、できるだけ患者さんの負担を軽くするような手術を心がけています。
症状のある子宮筋腫に対する治療法としては、薬物療法や手術療法がありますが、改善しないもしくは手術を希望されない患者さんに対して子宮動脈塞栓術(UAE)を行っています。
子宮筋腫に栄養を与えている子宮動脈の血流を止めることによって、筋腫を縮小させ、筋腫によって生じる過多月経などの症状を改善する治療法です。足のつけ根に局所麻酔を行い、足のつけ根の動脈にカテーテルを入れ筋腫近くまで進めます。カテーテルから塞栓(そくせん)物質を注入し、血流を遮断します。塞栓が完了したらカテーテルを抜き、傷口を押さえて止血します。いわゆる筋腫に対する「兵糧攻め」です。
血管描出(塞栓前) 血管描出(塞栓後)
塞栓前MRI画像 塞栓後MRI画像